ずっと住み続けられる家づくり
モルタル外壁は、人が塗り付け、セメントと水が反応し、日射と風が乾かし、硬い壁になります。モルタルの主原料は、セメントと砂と水。そのどれも日本国内で自給可能な地産地消の製品です。
リフォームが必要になる将来も入手することが可能でしょう。
セメントは石灰石を焼いてつくります。日本の石灰石は数億年前にサンゴなどが堆積したものです。
砂は岩を砕いてつくります。石や岩は、山から街へと居所を変え、形を変えて存在し続けます。
最近は、生ゴミや不燃ゴミなどの都市ゴミからセメントをつくる技術もできました。
セメント製品は様々ありますが、工場でつくられる製品は乾燥養生などにエネルギーを必要とします。
モルタルを現場で塗れば、左官職人の力と自然の力で壁になります。モルタルを塗る仕事は日本固有のものでなく、数千年も昔から世界中に存在するスタンダードな仕事です。
役目を終えたモルタルは、砕いて再使用されるか、大地に還ります。
モルタル外壁は、石のように硬いモルタルがメタルラスによって補強されているために、非常に強靭です。火災や地震などの災害から住宅をしっかり守り、また、風や日射、雨水などを遮って、住宅の構造体を長持ちさせてくれるため、安心して、長く住まうことができます。
モルタル外壁は火災を防ぐために振興されてきました。昔起きていた大火が今や無縁になったことにはモルタル外壁の貢献もあるでしょう。
またモルタルを塗ると家は地震に強くなることが数々の実験で明らかにされています。これまでの震災でも多くの生命が救われたようです。
モルタル外壁は、飛来物を跳ね返す力があります。台風や突風で物が飛ばされてきたとき、外壁を突き抜けなければ、家に居る人の命を守ることができるでしょう。
メンテナンスの面でも、モルタル外壁は表面の仕上げ材を塗り替えるだけでその性能を維持することができ、持続性に大変優れています。
家の外観は、永く晴雨風雪に晒されながら存在し続け、街並みを左右する大切なものです。
奇抜過ぎず、時を経ても飽きないもの。だけど個性もあり、実用性や機能的価値もあり、愛着を感じるものであって欲しいです。
モルタル外壁は、一見シンプルな表情ながら、仕上げ材でどのようにも変化します。
仕上げ材を部分補修するだけという暮らし方もあれば、仕上げ材をリニューアルすることも簡単にできる、タイムレスなデザインです。
タイムレスデザイン、邸宅が建ち並ぶエリアにモルタル外壁が多いのは、単に高級であるとか、長持ちするからだけではないでしょう。
いっときの流行デザインではなく、数10年住み続けても違和感なくそこに映えるデザイン。
完成時が最上の状態で、年月とともにみすぼらしくなっていくものがあふれるなか、完成してから年月とともに和み落ち着いていくデザイン。
人は歳とともに体力や地肌は衰えていくものの、人ととしての深みや優しさが培われていきます。 石は巌となり、苔むしていきます。 木々は、高く生い茂り表皮は硬くなっていきます。
時の移り変わりとともに変わっていく、モルタル外壁。
タイムレスデザイン、住み続けるためには維持保全が必要です。いつの時代も材料が入手できて、人の手によって修復できる外壁。
もうその製品は無くなりました。つくっていた企業は廃業しました。そんなことは織り込み済みで、それでも維持保全が可能なデザインです。
モルタル外壁は大正時代から日本で普及し、100年たった今でも住宅をはじめさまざまな建物の外壁に使用されています。
モルタルを正確に、美しく塗る錬磨された左官技術は、無形文化遺産にも登録されました。
モルタル外壁は、優れた左官技術を現代に、さらに、未来に伝えていきます。